ムジナモものがたり

水生食虫植物ムジナモの生き方

1.ムジナモってどんな植物? 

ムジナモは水生すいせい食虫植物しょくちゅうしょくぶつです。うつくしい緑色みどりいろ輪生りんせいしてつらなり、水面下すいめんかかんでいます。輪生葉りんせいよう先端せんたん半透明はんとうめい捕虫葉ほちゅうようになっています。

食虫植物しょくちゅうしょくぶつはいろいろな方法ほうほうむしつかまえます。ムジナモは水中すいちゅうでどのような方法ほうほう獲物えものをつかまえるのでしょうか?

ムジナモははさしき獲物えものとらえます。りくむハエトリソウの捕虫ほちゅう仕方しかたとよくていますが、ムジナモの捕虫葉ほちゅうよううごきはずっとはやいです。

ムジナモがミジンコを捕食ほしょくしている様子ようすです。

ムジナモの捕虫葉ほちゅうよう二枚貝にまいがいのようにひらいて獲物えものっています。

ミジンコをつかまえる様子ようすてみましょう。一瞬いっしゅんじてミジンコをとらえます。じるはやさは0.02びょうで、これは植物しょくぶつうごきのなかでも最速さいそくです。

獲物えものとらえたあと獲物えものうごつづけることで狭窄運動きょうさくうんどうこり、捕虫葉ほちゅうようふち部分ぶぶん密着みっちゃくします。水中すいちゅうでも消化液しょうかえきれださないような密閉みっぺいしたふくろができます。そこで分泌ぶんぴつされた消化酵素しょうかこうそによって獲物えもの分解ぶんかいされ、養分ようぶんとして吸収きゅうしゅうされます。

捕虫葉ほちゅうよう半分はんぶんって光学顕微鏡こうがくけんびきょう電子顕微鏡でんしけんびきょう観察かんさつしてみましょう。

細長ほそなが構造こうぞうは「感覚毛かんかくもう」とよばれ、ここで獲物えものかんじることができます。キノコのような構造こうぞうは「消化腺毛しょうかせんもう」で、何種類なんしゅるいかの消化酵素しょうかこうそつくって分泌ぶんぴつします。エックスがた構造こうぞうは「吸収毛きゅうしゅうもう」で、じた捕虫葉ほちゅうようふちあいだ水分すいぶんり、密閉みっぺいたすけるはたらきがあるようです。

消化腺毛しょうかせんもう細胞さいぼうなかてみましょう。キノコのようなかたち頭部とうぶ細胞さいぼう細胞壁さいぼうへき細胞さいぼうなかていてものはこびやすくなっています。細胞さいぼうなかにはひらたいふくろのような構造こうぞうがたくさんかさなっていてかわのようにえます。ここで消化酵素しょうかこうそつくります。

ふゆあいだ、ムジナモは緑色みどりいろたまのような冬芽とうがとなって水底みなぞこしずんでいます。はる水温すいおんがると水面下すいめんかがり成長せいちょう再開さいかいします。真夏まなつ気温きおんたかつづくと花芽かが形成けいせいし、ごくまれに開花かいかします。ムジナモのはなはとてもめずらしいので「まぼろしはな」とばれます。

真夏まなつ天気てんき真昼まひるに1時間じかん程度ていど開花かいかしますが、そのあとすぐにじてしまいます。満開まんかいはなることができるチャンスはとてもすくないのです。

2.世界のムジナモ発見と分布 

このようにめずらしい水生すいせい食虫植物しょくちゅうしょくぶつムジナモが地球上ちきゅうじょうのどのような場所ばしょきてきたのか、また、どのように発見はっけんされたのかてみましょう。

ムジナモは1696ねんにインドで発見はっけんされました。その当時とうじのイタリアの博物学者はくぶつがくしゃAldrovandiにちなんでムジナモの学名 がくめいAldrovanda vesiculosa L. とつけられました。

Ulysiss Aldrovandi(1522 – 1605)
Wikipediaより

1696年 インドで発見

その後、ヨーロッパ、オーストラリア、日本、アフリカでも。

学名
Aldrovanda vesiculosa L.

イタリアの博物学者
Aldrovandiがムジナモの学名の由来


進化論しんかろん有名ゆうめいなチャールズ・ダーウィンが1876ねんに『Insectivorous Plants』というほんなかでムジナモを紹介しょうかいしたことにより、ムジナモはひろられるようになりました。

ムジナモはヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、アジアなど世界各地せかいかくちつかりましたが、アメリカ大陸たいりくにはいません。一方いっぽうりくみ、ムジナモと捕虫ほちゅう仕方しかたをするハエトリソウはアメリカ大陸たいりくだけにられます。世界各地せかいかくちのムジナモは20世紀せいきになると人間にんげん活動かつどう影響えいきょう次々つぎつぎ消滅しょうめつし、世界的せかいてき絶滅ぜつめつ危惧きぐされる状況じょうきょうとなりました。

<ムジナモ分布図>
20世紀になると各地のムジナモは次々と消滅
“Aldrovanda The Waterwheel Plant”
Redfern Natural History Productions Ltd (2012/5/1)

ヨーロッパのムジナモ生息地せいそくち写真しゃしんです。

Lake Lucemier, in the Ukraine
“Aldrovanda The Waterwheel Plant”
Redfern Natural History Productions Ltd (2012/5/1)
Lake Mostki, in western Poland
“Aldrovanda The Waterwheel Plant”
Redfern Natural History Productions Ltd (2012/5/1)

3.日本のムジナモ発見と分布 

日本にほんのムジナモは1890ねん牧野富太郎まきのとみたろう江戸川えどがわ河畔かはん発見はっけんしました。その様子ようすは2023ねんのNHKあさドラ「らんまん」でも紹介しょうかいされました。水面下すいめんかくムジナモの様子ようす動物どうぶつ尻尾しっぽていることから「ムジナモ」と命名めいめいしたそうです。

牧野富太郎 武州水元水郷にて
画像提供:牧野一浡氏

1890年、小岩村 江戸川河畔で牧野富太郎が発見。和名ムジナモと命名。詳細な解剖図を発表。特に珍しい花の解剖図は世界的に注目された。


その「ムジナ」は「アナグマ」のことでしょう。ムジナモとアナグマの尻尾しっぽはよくています。

Wikipediaより
牧野日本植物図鑑(北隆館)より

牧野富太郎まきのとみたろうが学名をつけた「タヌキモ」という水生すいせい食虫植物しょくちゅうしょくぶつもあります。こちらはタヌキの尻尾しっぽていますね。

Wikipediaより
牧野日本植物図鑑(北隆館)より

牧野富太郎まきのとみたろう当時とうじめずらしかったムジナモのはな捕虫葉ほちゅうよう詳細しょうさい解剖図かいぼうず発表はっぴょうし、世界的せかいてき評価ひょうかされました。

牧野富太郎によるムジナモの解剖図
植物学雑誌 第7巻(1893)

そのあと日本にほん研究者けんきゅうしゃによってムジナモ捕虫葉ほちゅうよう運動機構うんどうきこうかんするすぐれた研究けんきゅうおこなわれてきました。感覚毛かんかくもうから運動細胞うんどうさいぼうへの刺激しげき伝達でんたつ動物どうぶつ神経しんけいのように電気信号でんきしんごうによることもあきらかにされました。

捕虫葉の模式図
(飯島敏夫 1981)

20世紀せいきのはじめに日本にほん各地かくちでムジナモの自生地じせいちつかりました。1920ねん国天然記念物くにてんねんきねんぶつ制度せいどができると次々つぎつぎ指定していされました。ところが20世紀せいきなかばまでにムジナモの自生地じせいち次々つぎつぎ消失しょうしつしました。人間にんげん活動かつどう起因きいんする干拓かんたく工場排水こうじょうはいすい農薬のうやく化学肥料かがくひりょう多用たようによる水環境みずかんきょう変化へんか外来生物がいらいせいぶつ繁殖はんしょくなどがおも要因よういんです。

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